Audi S8 4H ATF交換
ATF交換をご用命いただき、ご入庫の運びとなりました。
アウディのフラッグシップサルーン「A8」をベースにスポーツ性能を強化した「S8」

搭載された4.0L V8ツインターボエンジンは最高出力520ps、最大トルク650Nmを発揮、そのパワーはアウディが誇る4WDシステム「quattro」を介して路面へ伝えられます。
ですが強烈なエンジンパワーはまずはじめにトランスミッションが受け止めます。
ハイパワーな車両はトランスミッションの定期的なメンテナンスを実施することで高水準な走行フィールの維持、並びに故障率の低減が期待できると考えます。
今回のATF交換作業メニューの詳細は下記となります。
・ATオイルパン脱着、及びストレーナー交換
・トルコン太郎によるATF圧送交換
・添加剤「SOD-1 Plus」の添加
圧送交換によりAT内部のATFをほぼ全量新油に入れ替え、可能な限り新車時のフィーリングに近づける。さらに添加剤を添加し、AT内部保護性能向上を図る、といったイメージの施工メニューです。
ご入庫後は車両を整備ブースへ移動し、作業の準備をします。

エアサス搭載車ですのでジャッキアップモードへ移行後、リフトアップ。
ATオイルパンの脱着清掃、及びストレーナー交換作業を進めます。

ATオイルパンを取り外すにはエンジン側のサブメンバーブレース、及びミッションマウントブラケットを取り外す必要があります。

各部品を取り外し、ATオイルパンにアクセスします。

ATオイルパンドレンからATFを排出。
ドレンから排出されているATFは透明度があり、深刻な劣化はしていないと考えられます。
排出時にATFのサンプルを採取しておきます。


オイルパン、及びストレーナー取り外し。

バルブボディ表面は鉄粉の付着もなく、状態は良好。

取り外したATオイルパン。

こちらにも鉄粉等の堆積物はございません。

オイルパンは清掃し、再使用します。

ストレーナー、ガスケット、ボルト類は新品に交換。

ストレーナーには鉄粉を吸着するための磁石が取り付けられております。

鉄粉の吸着は見受けられますが、量としてはごくわずかと言えるでしょう。

各部品を取り付け、ATオイルパンまわりを復元していきます。
オイルパン取り付けボルトはアルミ製ですのでオーバートルクで締め付けるとすぐに破断してしまいます。
そのためトルク管理が非常に重要となります。
当店は各メーカーの整備マニュアルを参照し、適正なデータを調べることが可能です。

ATオイルパン復元後はATF圧送交換の準備をします。
S8のATF圧送交換を実施する際は専用アダプターが必要です。

ATFクーラーラインにS8専用のアダプターを割り込ませ、トルコン太郎へ接続。


トルコン太郎には点検窓があり、ATFの状態をリアルタイムで確認できます。
・左:新油モニター… トルコン太郎にセットした新油ATFの状態を確認できます。
・中:クリーナーモニター… AT内部を循環するATFの状態を確認できます。
・右:廃油モニター… AT内部から排出されたATFの状態を確認できます。


今回はWAKO’S ATF Premium S をチョイス。
滑らかな変速フィーリングと高い動力伝達能力を両立した全化学合成ATFで国産、輸入車問わず幅広い車種に使用できます。
ATFと聞くと赤色を思い浮かべがちですが、こちらは黄金色です。

まずはATFストレーナー交換時に排出した量のATFをATへ補充しエンジンを始動、ATFを循環させます。
まだ圧送交換はスタートしていませんので、当然ですがクリーナーモニターのATFとサンプルとして採取したATFの透明度は同等です。

AT内部状態も概ね良好、またATFの劣化状態も問題ない範囲でしたが、新油モニターのATFとクリーナーモニターの透明度には明らかな差が見受けられます。
クリーナーモニターのATFが新油モニターのATFと同等の透明度になるまで圧送交換を実施します。

トルコン太郎を操作し、圧送交換をスタートします。
ATを循環するATFを抜き取りながら、新油を充填。
廃油モニターに汚れたATFが流れてきます。

1回目の圧送交換サイクルが完了、現段階で合計9LのATFを使用しました。
この時点でクリーナーモニターのATFと採取したサンプルのATFの透明度に明らかな違いが見受けられます。
この後はATFを3L追加し、2回目の圧送交換サイクルをスタートします。

2回目の圧送交換サイクルが完了、合計12LのATFを使用しました。
クリーナーモニターのATFは新油モニターと同等の透明度になりました。
AT内部のATFがほぼ全量、新油に入れ替わったと言って差し支えないでしょう。

圧送交換後のAT内部を循環するATFと交換前のATF、違いは明らかです。

ATF圧送交換後、ATに添加剤を添加します。
今回はSOD-1 Plusをチョイス、油脂類の性能を飛躍的に向上させる添加剤です。
ATFに添加することで強固な油膜を形成し、動力伝達効率の向上やAT内部保護性能の向上を図ります。

添加量はATF全量の7%
規定量を計量し、フィラーから添加します。
SOD-1 PlusはATFだけでなくCVTFやマニュアルトランスミッションギヤオイル、デフ、トランスファーオイル、エンジンオイル、パワーステアリングフルード等にも添加が可能で、油脂類に対して幅広い親和性を有するのも大きな特徴のひとつです。
なお、ブレーキフルードや2サイクルオイル、日産車で一部採用されていたエクストロイドCVT等の特殊な構造を有するトランスミッションには添加不可ですのでご注意くださいませ。

SOD-1 Plus添加後はATFを規定量に調整。
油温を規定値まで上昇させ、オーバーフローさせます。

「ATFを交換するとミッションが壊れる」という言い方は半分は正解で、半分は不正解です。
「ATFを交換したからミッションが壊れた」のではなく、「もともと不具合を抱えながらも体感できる症状を確認できないまま走行できていたミッションが、ATFを交換したことにより潜伏していた不具合が体感できる症状として表面化してしまい、ここでようやく人間が不具合があると感じ取れるようになった」というのが正解です。
オートマチックトランスミッションは不具合を感じてから整備、修理を検討され整備工場へ入庫されますと往々にして高額な修理代が発生してしまう、いわば「手遅れ」の状態に陥りがちです。
不具合を感じる前に、然るべきタイミングで「予防整備」としてATFを交換されることをおすすめさせていただきます。

油量調整後はATシフト学習値をリセット。

取り外した部品を組付け車両を復元し、試運転を実施。
シフトフィールに異常がないことを確認し、整備作業完了とさせていただきました。
この度は当店をご利用いただきまして誠にありがとうございました。