2026.04.03 | アストンマーティン・ポルシェ・外車・輸入車販売・車検・整備・点 検・修理・ASTONMARTIN・PORSCHE

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Aston Martin V8 Vantage クラッチ交換 Velocity ツインプレート化

アストンマーティン V8ヴァンテージ

エレガントなグランドツアラーの佇まいの中に、ピュアスポーツカーとしての設計思想を色濃く宿した一台です。
V8ヴァンテージは単なるGTカーではなく“走るためのアストンマーティン”であることを物語っています。

V8ヴァンテージにはMTモデルとASMモデルが存在します。
当車両はASMモデル。
MT機構をベースにクラッチ操作と変速を電子制御で行うASMは、パドルシフトによる直感的な操作とダイレクトなドライビングフィールを両立したシステムです。
トランスアクスルレイアウトと組み合わさることで、ドライバーの意思に忠実に応える、ピュアスポーツとしての資質をより際立たせています。

今回はクラッチ交換をご用命いただき、ご入庫の運びとなりました。

ご入庫後は診断機を車両へ接続し、現状のクラッチ残量数値を確認。
数値は「1800」程度、クラッチ摩耗が進行し始めている状態を表す数値です。

当店はアストンマーティン純正診断機(AMDS)を保有しております。
然るべき情報を的確に把握できることが当店の強みです。

その後、現状の走行フィールを確認するべくロードテストを実施。
数値だけではなく、実際の走行フィーリングから得られる情報も診断において重要な要素となります。

ロードテスト後は車両を整備ブースへ移動、クラッチ交換作業にあたります。

V8ヴァンテージの動力伝達機構レイアウトは一般的なFR車両と異なります。

・一般的なFR車両
エンジン→クラッチ→トランスミッション→プロペラシャフト→ディファレンシャル→駆動輪

・V8ヴァンテージ
エンジン→クラッチ→プロペラシャフト→トランスアクスル→駆動輪

クラッチ機構を交換する際はトランスアクスル(モデルによっては駆動輪足まわり各部も含めて)からクラッチ側へ遡る形で部品を取り外していきます。

車両をリフトアップ、まずはエキゾーストパイプ、触媒等を取り外します。

クラッチ機構にアクセスするためにエキゾーストマニホールドも取り外します。

駆動輪とトランスアクスルの接続部を切り離し。
トランスアクスルを車両から分離します。

V8ヴァンテージはGraziano製6速トランスアクスルを後方に搭載することで前後重量配分51:49と理想的なバランスを実現。
この設計はアストンマーティンの伝統的なグランドツアラーの枠を超え、ピュアスポーツカーとしての高い運動性能を追求した結果と言えるでしょう。

クラッチ機構とトランスアクスル間に配置されているプロペラシャフト、及びトルクチューブを取り外しクラッチ機構と対面。

取り外したトルクチューブ、及びプロペラシャフト。

エンジンとトランスアクスルを高剛性のアルミ製チューブで締結することでシャーシ剛性を高め、理想的な重量配分と優れたレスポンスを実現。

トルクチューブに格納されているプロペラシャフトはカーボンファイバー素材を採用。

軽量かつ高剛性なカーボンシャフトにより回転レスポンスと振動特性を向上、優れた運動性能と快適性を高い次元で両立しています。

クラッチ交換作業を進めます。
クラッチカバー、及びディスクを取り外し。

フライホイールも交換のため取り外します。

クラッチプレート、カバー新旧比較。

車両へインストールするクラッチキットは「Velocity」製ツインプレートタイプ。

スチール製の純正シングルタイプクラッチカバーに対し、Velocityツインプレートタイプクラッチカバーはクラッチプレート一体型のアルミ製です。

ツインプレートタイプクラッチにコンバージョンをすることで得られるメリットの簡単な説明は下記になります。

①受け止められるトルク容量アップ

クラッチプレートの数が2倍になるため摩擦面も2倍になります。
そのためクラッチ機構の伝達能力が純正シングルタイプクラッチと比較し高くなりますので、高いエンジン出力、高トルクを受け止められる余裕が生まれます。

その結果、

・クラッチが滑りにくい
・高負荷でも安定する
・高出力化したチューニング車両にも対応

②耐久性の向上

シングルタイプクラッチと比較し負荷が分散し熱害に強いのでクラッチプレートの摩耗が遅くなる傾向にあります。

その結果、

・クラッチライフが伸びる
・クラッチメンテナンスサイクルが伸びる

またツインプレートクラッチは一般的に半クラッチ領域がシビアになる傾向がありますが、ASMモデルではクラッチ操作を電子制御が担うため、その特性は大きく異なります。
むしろ摩擦面積の増加によるトルク伝達の安定性が制御との相性を高め、発進時のジャダー低減や変速時のショック軽減といったメリットが現れるケースが多く見られます。

フライホイール新旧比較。

新たに取付けるフライホイールには肉抜き加工が施されており、純正品と比較し約1.5Kg軽量化されています。

併せてパイロットベアリングを交換。
小さな部品ですが、インプットシャフトの軸を支える重要な部品です。

フライホイールを取付け、規定トルクで締め付けます。

クラッチプレート、及びカバーを取り付け。

アストンマーティン純正SST(特殊工具)を用いてクラッチセンターを出し、規定トルクで締め付けます。

当店はアストンマーティンをはじめとした、車両整備に必要なSSTを多数保有しています。

然るべき手順で整備作業を完結できる要素が揃っていることが当店の強みです。

トルクチューブに取付けられているスレーブシリンダー。

VHアーキテクチャ世代のMT/ASM機構を採用しているアストンマーティンは一般的なレリーズフォーク方式ではなく、Concentric Slave Cylinder(コンセントリック・スレーブシリンダー)によってクラッチを直接作動させる構造を採用しています。
リンク機構を介さずに直接クラッチを操作することで作動ロスを低減し、より高精度なクラッチ制御が可能となります。
トランスアクスルレイアウトやトルクチューブ構造と組み合わせることで、パッケージングと運動性能の両立が図られた設計と言えるでしょう。

スレーブシリンダー新旧比較。

昨今はスレーブシリンダーの生産、供給ルートが非常に不安定なようです。

当クラッチキットをオーダーしても、状況によってはスレーブシリンダーの生産が止まっているため当店に入荷してくるまでに数か月の時間を要する、という状況も珍しくありません。

ツインプレートタイプクラッチ取付けにあたり、スレーブシリンダーをトルクチューブ間のスペーサーカラーも変更。

新品のスレーブシリンダーを取付け。

カーボンファイバー製シャフトを組込み、車両へ搭載します。

トランスアクスル搭載前に各締結部を清掃します。

手間も時間もかかりますが、確実な整備を実施するにあたり必要なことです。

トランスアクスル搭載後はエキゾースト関係を取付け復元。

排気漏れ防止のためエキゾーストガスケットも新品に交換します。

トルクチューブ、トランスアクスル、エキゾーストを取付け車両復元後はASMフルードラインの確実なエア抜き作業を実施。

クラッチ交換作業後は車両のクラッチ学習値をリセットし、再学習を実施します。

クラッチ関連の数値もクラッチ交換前の「1800」程度から「1300」程度へ変化が見受けられます。
クラッチが新品になり、摩耗が進行していないと車両が認識している証拠です。

最後に最終チェックを兼ねたロードテストを実施、違和感や不具合がないことを確認。
併せて走行中にエンジン学習を実施し、整備作業完了とさせていただきました。

ツインプレートタイプクラッチへ交換後は、シングルタイプクラッチとは一味違う走行フィールとなりました。

 

今回の作業ではクラッチ周辺のコンディションを見直すことで、発進時のコントロール性や変速時のフィーリングが大きく改善されています。

「走る歓び」を追求してきたアストンマーティンの思想が生み出した、V8ヴァンテージ本来の運動性能を、より自然なかたちで引き出す仕上がりとなりました。
これからもこの一台が優越を体現し、気高い走りと歓びをもたらしてくれることを願いながら、お客様のもとへお返しさせていただきました。

この度は当店をご利用いただき、誠にありがとうございました。

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